理論中枢

《交界の羅針盤》は、多種解放の哲学を基幹に据え、互いを補完する三つの要素がその柱をなします。


基幹:多種解放

韓:다종 해방

中:多物種解放;多物种解放

葡:Libertação Multiespécies

英:Multispecies Liberation

 多様な存在者たちの相互的な関わりを踏まえつつ、そこに作用する支配や抑圧の力学に光を当て、その克服をめざす倫理枠組みです。今日の世界を批判的に捉え直すとともに、周縁化されてきた存在者たちの経験と生活条件を見据え、制度・認識・関係の諸次元におよぶ人間と人間以上の脱植民地化を模索します。


柱 1:多世界的関係論

韓:다세계적 관계론

中:多元世界關係論;多元世界关系论

葡:Relacionalismo Pluriversal

英:Pluriversal Relationalism

 世界は単一ではなく、各々の存在者に伴う観点と存在様式の数だけあり、それらが連なり重なり合って関係の網を織りなしています。ただし、その関係は支配秩序の影響下にあり、中央化された世界の繁栄とともに、周縁化された諸世界の荒廃を招いてきました。そこで、多種解放の哲学は世界の多元性を認めるだけでなく、そこに潜む関係を批判的に見つめ直し、誰にとっての世界が誰の犠牲の上に成り立っているのかを考えます。

 この柱は《交界の羅針盤》の存在論を構成します。


柱 2:知の生態系

韓:지식의 생태계

中:知識的生態系;知识的生态系统

葡:Ecologias do Conhecimento

英:Ecologies of Knowledge

 正統と認められ、権威として参照される知には大きな偏りがあります。それは歴史的に築かれた力関係に根ざす傾向であり、しばしば私たちの思考と認識を抑圧的な現状肯定へと導きます。多種解放の哲学はこの罠を脱するために、学術研究だけでなく、各地の運動や芸術、生活実践などをも、知の重要な構成要素と捉えます。多様な声の往還と交流を通し、単一の視点では捉えきれなかった世界の輪郭を浮かび上がらせます。

 この柱は《交界の羅針盤》の方法論を構成します。


柱 3:交差的想像力

韓:교차적 상상력

中:交叉性想像力;交叉性想象力

葡:Imaginações Interseccionais

英:Intersectional Imaginations

 現代の問題群は、種・性・人種・階級・能力・国籍など、複数の権力軸が絡み合った構造の中で生じています。多種解放の哲学はその構造を交差的に読み解き、現在の支配秩序が誰の声を奪っているのか、誰の生をさまたげているのか、誰の苦しみを覆い隠しているのかを明らかにします。その想像力は、各存在者の経験や状況に寄り添う「身体化された倫理」の模索へ、さらに抑圧の後押しを拒む政治行動の創出へと向かいます。

 この柱は《交界の羅針盤》の実践論を構成します。