
《交界の羅針盤|Pyxis Limethica》 は、相異なる生命と知的領域の交わりに立つ《交界》の思想を通して現代を見つめ、よりよい未来をともに構想するための学際的メディア・スペースです。
飢餓や貧困、環境破壊、資本主義の暴走をはじめ、今日の世界を悩ませる課題をめぐっては、これまでに数多くの議論が重ねられてきました。しかし、そこでは往々にして特権に恵まれたごくわずかな人間集団の利益を守ることが目指され、各地に暮らす無数の人々、そして人間以上の存在たちにおよぶ害が見落とされてきたきらいがあります。その傾向は結果として私たちの現状認識を曇らせ、差し迫った問題群の理解と解決を困難にしています。
加えて、現状を問い直す正義の思想と実践も、いまだ分断を乗り越える活路を見出せていません。人間が先か、動物が先か、環境が先かなど、おのおのの正義が争点の優先順位に囚われ、互いのあいだに不和と緊張関係を生んでいます。団結が必要とされる状況の中、私たちはむしろ離ればなれになっている感が否めません。
いま求められているのは、これまでの狭い世界観を脱し、果てしなく多様な存在者たちの現実世界に寄り添う新たな航路を描き直す試みです。そのためには、帰属・言語・文化の境を越える横断の思考、そして専門知・先住知・生活実践知の結び合わせを試みる協働の実践が欠かせません。
《交界の羅針盤》は、諸世界で蓄えられてきた洞察を広く参照し、人間と人間以上の脱植民地化を目指す多種解放(Multispecies Liberation)のパラダイムを築いていきます。人間中心主義、帝国主義、資本主義、父権制など、地球の存在者たちをさいなむ抑圧構造の転覆、そして正義の分断を生む知的・認識的制約の克服を、表裏一体の課題として探究すること、それが本スペースのめざすところです。
対話と共有の積み重ねが、その鍵となるでしょう。すなわち、参与する人々が問いを交わし、観点と経験を持ち寄り、互いの展望を深め広げていくための場――知と倫理の生態系――を育てていくことが、案内人の願いにほかなりません。
よりよい未来を志向しつつ、ともに思索と実践を育てていく場として、あなたの参加を心より歓迎します。
Pyxis Limethicaとは?
Pyxis はラテン語で「羅針盤」、LimethicaはLimen 「境界」+Ethica 「倫理」の混成語で、異なる生命や知的領域の境に立ちつつ、新たな生き方を探る理念を表しています。
すなわち Pyxis Limethica(交界の羅針盤) とは、 多様な存在者たちの観点が織りなす多様な世界に寄り添い、私たちの進むべき方角を示す羅針盤となることを願った名です。
ロゴの意味
複数の円環が重なった羅針盤の図。
それぞれの円環は、異なる存在者たちの世界と、異なる知の領域を表します。

案内人(Navigator) 井上太一
翻訳家・執筆家。2015年以降、批判的動物研究、動物倫理学、ビーガニズム、フェミニズムを専門に出版翻訳と執筆に従事。
《交界の羅針盤》を立ち上げた動機は、多種解放という倫理的展望を持ちつつ、多様な知を結び合わせる交流空間をつくりたいとの願いにありました。関心や専門の違いを超え、読者と案内人がともに学びを深め合う場とすることをめざし、このスペースを育てていきたいと考えています。
公式ホームページ:ペンと非暴力
researchmap:井上太一
読者への呼びかけ
《交界の羅針盤》は一方的な発信のためのものではなく、対話と共学のための空間です。
知識と視点の分かち合いこそが、私たちの思索と実践を育てます。新時代の生き方を探る交界の旅に、ぜひ参加してください。
あなたの気づきや問いも、この羅針盤に新たな方向を加える大切な力となるに違いありません。
