研究領域マップ

 《交界の羅針盤》は、多種解放の展望を軸としつつ、相互に連関する三つの研究プロジェクトを進めます。参照・言及する分野は多岐にわたりますが、それらはこのいずれか一つ、あるいは複数の領域に位置づけられます。
 以下のマップは、《交界の羅針盤》における諸分野の配置と接続を示しています。ただし、ここに書かれていない分野、見つかっていない接続もあります。読者との議論や対話によって、このネットワークを発展させていくことも重要なプロセスとなるでしょう。

1.存在と主体の再編

 この領域では、人間中心的な主体概念と存在論を解体し、人間を超えた関係論的な存在・主体論を模索します。
 従来の西洋哲学は、ある特殊な人間像を「人間」のプロトタイプと定め、「人間」のみが主体であるという思想を打ち立てました。しかしこの人間中心的な「主体」の概念は、多様な存在やその主体性を不可視化・周縁化してきたきらいがあります。
 《交界の羅針盤》はこの狭い視野を乗り越えるべく、存在者の多様性と関係性に光を当て、「人間」に囚われない思考を育てるための存在論的転換を図ります。

おもな関連分野

ポストヒューマニズム、多種研究、先住民存在論、新唯物論、神話学、生物地理学、生態学、生物多様性研究
など


2.知の批判と再編

 この領域では、知のあり方そのものに潜む権力構造を批判的に検討し、探究活動の前提を再考します。
 私たちが「正しい知識」と思っているものは、実のところ特定の歴史的・社会的条件の影響を受けています。例えば、誰の発言が信頼されるのか、どの言語で書かれた研究が権威を持つのか、といった基準そのものが中立ではありません。知を生み出す仕組み自体が、知らず知らずのうちに力関係を再生産してきた可能性があります。
 《交界の羅針盤》はこの反省を踏まえ、知の閉塞と硬直を防ぐための問い直しを続けるとともに、より民主的・包摂的な知の様態を考えます。

おもな関連分野

多言語研究、翻訳理論、知識社会学、科学史、フェミニズム科学論、フェミニズム言語学、先住民科学
など


3.抑圧分析と解放哲学の模索

この領域では、世界を覆う権力と抑圧の構造を分析し、多種解放を実現するための現状批判と変革の理論を構想します。
 今日を生きる諸存在の生は、交差するさまざまな権力軸の影響下にあります。政治経済・社会制度・科学技術・インフラ構造などの諸次元におよぶその力学を改めていくには、単一的な倫理規範を超えた理論が求められるでしょう。
 《交界の羅針盤》はこの目標を見据え、種々の解放理論が生んだ洞察を結び合わせつつ、多種の開花を可能とする総合的解放の哲学を探し求めます。

おもな関連分野

批判的動物研究、マルクス哲学、批判理論、脱植民地化論、フェミニズム、ジェンダー研究、人文地理学、生態建築学、環境都市工学
など


三領域の関係

これらの三領域は、多種解放の哲学を支える三本の柱――多世界的関係論、知の生態系、交差的想像力――に対応しています。《交界の羅針盤》はこれらのあいだを往還しつつ、現代世界の諸問題に応じる思考と実践の場を形づくっていきます。