20世紀後期以降に欧米圏で発達した動物倫理学はさまざまな論争を内包しつつ発達を遂げてきた。その代表的なアプローチは、
- 功利主義
- 義務論(権利論)
- 潜在能力アプローチ
- ケアの倫理
などに分かれる。これらの理論は、動物の擁護を基礎づけるという役割を同じくしながらも、動物にとって何が倫理的に重要か、動物利用はなぜ問題か、などの点に関して考え方が異なる。
動物にとって何が倫理的に重要か
- 功利主義は、種の違いによらず、個々の生きものがその利益を平等に配慮されているかどうかを考える。
- 義務論(権利論)は、個々の生きものがその内在的価値を顧みられ、等身大の存在として尊重されることを求める。
- 潜在能力アプローチは、個々の生きものがその潜在能力を開花できる条件に置かれているかどうかを問う。
- ケアの倫理は、個々の生きものの身になって考え、その求めに応答することをめざす。

動物利用はなぜ問題か
上に挙げた四つの立場は動物利用の何が問題かについても考え方を異にする。
- 功利主義は、動物利用の多くが動物たちの利益を不釣り合いに軽んじていることを問題視する。
- 義務論(権利論)は、動物たちが人間の目的に資する手段として扱われていることを問題視する。
- 潜在能力アプローチは、利用される動物たちが潜在能力の開花をさまたげられていることを問題視する。
- ケアの倫理は、動物たちの求めが顧みられず、その声が聞かれていないことを問題視する。

代表的な理論家
- 功利主義の理論家では、『動物の解放』を著したピーター・シンガーが代表者である。
- 義務論(権利論)の理論家では、『動物の権利擁護論』を著したトム・レーガンや、『動物の権利入門』を著したゲイリー・フランシオンが代表格となる。
- 潜在能力アプローチの理論家では、『正義のフロンティア』などの著作を持つマーサ・ヌスバウムが知られる。
- ケアの倫理の理論家では、キャロル・アダムズとの共著を発表してきたジョセフィン・ドノバンをはじめ、菜食フェミニストが中心を占める。
ただし、ここに挙げたのは20世紀以降の欧米圏における代表的理論にすぎない。非欧米圏における系譜は、別途整理を要する。
