フェミニズムには多数の流派があるが、2つの大きな流れとして、リベラル・フェミニズムとラディカル・フェミニズムの違いを整理すると、今日の争点や論争を理解するのに役立つ。
特に、女性の性表現やセクシュアリティをめぐる対立は、この2つの立場の違いに起因するところが大きい。
リベラル・フェミニズム
リベラルフェミニズムはリベラリズム(自由主義)の伝統にのっとり、自律的・理性的な個人の自由を尊重することに価値を置く。
| フォーカス | 個人の自律性・自由・尊厳 |
| 問題の所在 | 強要、同意のない干渉、差別的な扱い |
| 主体モデル | 自律的・理性的個人 |
| 変革戦略 | 選択肢の拡充、新しい女性らしさの創造、性教育 |
| 批判 | 選択の背後にある社会構造を軽視していないか |
| キーワード | 個人の自由、自己決定、選択肢、性的同意 |
| 他分野との関係 | ヒューマニズムの主体モデル、障害学の自立思想、クイア理論の性表現擁護、トランスヒューマニズムの身体改造論などと親和的 |
ラディカル・フェミニズム
ラディカル・フェミニズムは個人的な行動や人間関係の背景に政治的な力学(父権制)があると考え、男女間の構造的な支配関係を解体することに主眼を置く。
| フォーカス | 性にもとづく支配関係の解体 |
| 問題の所在 | 父権制、内面化された支配 |
| 主体モデル | 社会構造の中に埋め込まれた階級 |
| 変革戦略 | 意識覚醒、ジェンダー規範の解体、新しい意味体系の創造 |
| 批判 | 男女の権力差を固定的に捉えすぎる傾向があるのではないか |
| キーワード | 個人的なことは政治的なこと、同意の背後にあるもの |
| 他分野との関係 | フーコーの規律権力論、植民地研究による支配の内面化理論、ビーガニズムの肉食主義批判などと親和的 |
具体的な違い
リベラル・フェミニズムとラディカル・フェミニズムの違いが特に顕著に現れるのは、性表現や性産業についての考え方である。
女性が性的な服装をすることについて
リベラル
個人の自由
ラディカル
その選択はどのような社会条件のもとで形作られているか?
性売買やポルノグラフィの倫理性について
リベラル
本人が望む限り認められるセックスワーク
ラディカル
父権制社会がつくった構造的な性搾取
フェミニズムの諸流派は多くの場合、この対照的な二つの立場のどちらかに近い位置を占める。フェミニズムを学ぶ、あるいはフェミニズムに学ぶという時、そのフェミニズム自体がそもそも一枚岩でないことを振り返るのは重要だろう。
関連アーカイブ
参考文献
Rosemarie Tong and Tina Fernandes Botts (2017) Feminist Thought: A More Comprehensive Introduction 5th Edition, Routledge.
