欧米圏のフェミニズムは主として四つの「波」を形成してきたことで知られる。
第一波は19世紀末に始まった運動で、女性の法的人権を求める政治闘争の形をとった。
第二波は20世紀中期以降に興隆し、私的領域に潜む男性支配や性差別の構造を「父権制/家父長制」と捉えて分析した。
第三波は20世紀後期以降の潮流で、交差性の概念化と、それにもとづく多様なアイデンティティの包摂を主眼とする。
第四波は21世紀以降、オンライン環境を中心に形成され、フェミニズム自体の多様化と個人化を特徴とする。
1840
-1930s
第一波
- 教育・財産・参政権の要求
- 制度と弾圧に抵抗する直接行動
- 多様な社会改良運動との連携
主な出来事
- セネカフォールズ会議
- サフラジェットのハンガーストライキ
- 女性参政権の法整備
重要人物:
- エメリン・パンクハースト
- ソジャーナ・トゥルース
- スーザン・B・アンソニー
1960
-80s
第二波
- 「個人的なことは政治的なこと」
- 日常生活に潜む父権制の分析
- 性暴力・性搾取との闘い
主な出来事
- ラディカル・フェミニズムの発展
- 夜の奪還運動
- フェミニスト・セックス戦争
重要人物:
- ケイト・ミレット
- キャサリン・マッキノン
- アンドレア・ドウォーキン
1990
-2000s
第三波
- 「女性は一様ではない」
- 交差性の概念化
- 女性の選択と自己決定の重視
主な出来事
- ライオット・ガール運動
- クイア理論との対話
- ポストフェミニズムの台頭
重要人物:
- キンバリー・クレンショー
- ベル・フックス
- ジュディス・バトラー
2000s
-現在
第四波
- ソーシャルメディアによる運動の拡張
- 日常に潜む暴力や力関係の可視化
- 交差性の拡張と領域横断
主な出来事
- #MeToo運動の世界的広がり
- トランスフェミニズムの発達
- 立場の細分化と論争の激化
重要人物:
- タラナ・バーク
- ケイト・マン
- チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ
上の年代は各波が盛り上がった時期を指すが、第一波以前にも女性の地位向上を求める言論や運動はあった。また、新しい波の台頭は世代交代を意味するものではなく、現在でも第二波や第三波の系譜に属するフェミニストたちは活動を続けている。
より重要なことに、フェミニズムの歴史は単線的な進歩図式に収まらない。
第三波の時代には女性のエンパワメントが消費主義と結びつき、構造批判が弱体化したといわれる(ポストフェミニズム問題)。
第四波の時代にはソーシャルメディアの性質によって、内向きの監視や対話・検証不在の糾弾が広まり、無数の分断が生じた。
各波の時代に生まれた有意義な遺産を受け継ぎつつ、新しいフェミニズムの波を作っていくことが今後の課題かもしれない。
