交界の羅針盤 » 訳書『現実をつくる政治学』が刊行されました

訳書『現実をつくる政治学』が刊行されました


 このたび、《交界の羅針盤》案内人による新しい訳書、マリリン・フライ『現実をつくる政治学―性・言語・認識をめぐるフェミニズム理論』(慶應義塾大学出版会)が刊行されました。

 本書は様々な力関係に満ちた私たちの現実が、いかにしてつくられているのかを解き明かしたフェミニズム理論の名著です。
 私たちは「差別」「抑圧」「周縁化」などの概念を言葉としては知っていますが、それらは多くの場合、社会の中に規範や習慣として根付いているため、その実態をつかむことは決して容易ではありません。人々は時に、自分が損をさせられている感覚や、貶められている感覚、あるいはその場にいない者のように扱われている感覚を抱きながらも、それを個人的な問題と捉えてしまいがちです。ここには概念に関する知識と日常経験の隔たりがあります。
 本書はこの溝を埋めるべく、人々の経験からその根底にある構造を浮かび上がらせ、私たちが生きる現実の成り立ちをよりよく理解するための手がかりを与えてくれます。のみならず、本書は歪んだ現実を乗り越え、新たな現実を形作っていくための道筋をも照らし出しています。コンパクトでありながら、「個人的なことは政治的なこと」というラディカル・フェミニズムの精神を体現した、大きな古典といえるでしょう。

 フライについては《交界の羅針盤》でもいくつかの記事や資料で紹介してきましたが、本書の分析は権力の作用や関係の倫理を探究するうえで、今後も重要な参照軸となるに違いありません。
 書籍の詳細については出版社のウェブサイトをご参照ください。