《交界の羅針盤》は、多種解放(Multispecies Liberation)の哲学を基幹に据え、互いを補完する三つの要素がその柱をなします。

基幹:多種解放
多様な存在者たちの相互的な関わりを踏まえつつ、そこに作用する支配や抑圧の力学に光を当て、その克服をめざす倫理枠組みです。今日の世界を批判的に捉え直すとともに、周縁化されてきた存在者たちの経験と生活条件を見据え、制度・認識・関係の諸次元におよぶ人間と人間以上の脱植民地化を模索します。

柱 1:多世界的関係論
世界は単一ではなく、各々の存在者に伴う観点の数だけ存在し、それらが連なって関係の網を織りなしていると考える世界観です。ゆえに《交界の羅針盤》は特定の文化や知の体系に依存せず、多様な世界の捉え方や語り方にみられる差異と連続性に目を向け、継続的な認識の拡張を図ります。
この柱は《交界の羅針盤》の存在論を構成します。

柱 2:知の生態系
狭義の専門知だけにとどまらず、各地固有の伝統や生活実践、あるいは身体表現や芸術表現などによって生まれるさまざまな知を、有機的な生態系として捉えます。専門家と非専門家を分断せず、異なる立場の参加者たちがともに実験的に未来の世界を構想する協働の営みを促します。
この柱は《交界の羅針盤》の方法論を構成します。

柱 3:交差的想像力
現代の問題群は、種・性・人種・階級・能力・国籍など、複数の権力軸が絡み合った構造の中で生じます。その構造を交差的に読み解き、特定の声や語りを覆い隠す言説の不均衡を改めるとともに、各存在者の経験や状況から立ち上がる「身体化された倫理」を探し求めます。
この柱は《交界の羅針盤》の批判理論を構成します。
