人間は他の人間や動物を従属させるために様々な手法を用いてきた。その類型は身体的支配・心理的支配・生物学的支配に大別できる。
身体的支配――苦痛に訴える
身体的支配は標的となる生きものに苦痛を負わせ、苦痛回避のために支配者の意思に従うことを余儀なくさせる。
| 標的 | 人間、他の動物 |
| 手段 | 拘束、虐待、懲罰、報酬 |
| 特徴 | 身体への直接的・物理的暴力 |
| 例 | 奴隷制、DV、調教、訓練、反抗抑制 |
心理的支配――従属を刷り込む
心理的支配は、従属者としての心理を内面化させ、自発的に支配者に従う集団や個人をつくり出す。これが完了すると、暴力の行使はもはや不要となる。
| 標的 | おもに人間 |
| 手段 | 教育、社会化、暴言、辱め |
| 特徴 | 支配‐従属関係の内面化 |
| 例 | ジェンダー規範、植民地主義、イデオロギー |
生物学的支配――形質を書き変える
究極の支配は、生物学的な基盤そのものを操作する手法である。飼育される動物の多くは、品種改変によって従順さをその身に植え付けられる。
| 標的 | おもに他の動物 |
| 手段 | 品種改変、選抜育種 |
| 特徴 | 形質そのものに従順さを植え込む |
| 例 | 家畜開発、ペットブリーディング、盲導犬育成 |
これらの手法は単独で用いられることもあるが、しばしば組み合わせて使われる。また、身体的支配が被害者の自身や自尊心を破壊し、心理的支配として機能するなどの相補作用もある。
参考資料
- キャスリン・バリー著/井上太一訳(2024)『セクシュアリティの性売買──世界に広がる女性搾取』人文書院。
- サンドラ・リー・バートキー著/井上太一訳(2025)『女らしさと支配――抑圧をめぐるフェミニズム哲学』慶應義塾大学出版会。
- マリリン・フライ著/井上太一訳(近刊)『現実をつくる政治学――性・言語・認識をめぐるフェミニズム理論エッセイ集』慶應義塾大学出版会。
- ミシェル・フーコー著/田村俶訳(2020)『監獄の誕生――監視と処罰』新潮社。
